総合商社の機能は?「トレーディング」「事業投資」「バリューチェーン」とは?現役商社マンが解説!



採用ページを見ていると、白けた気持ちになる。

「資源!」「電力!」「事業投資!」・・・あるいは、変にデフォルメされた社員の武勇伝が並べられている。

優秀な層にもリーチした上で、彼らに夢を見させたいのだろう。だが、知りたい情報がなさすぎる。

残念ながら、実態は内部からしかわからない。というわけで、商社の実態をやや冷めた視点で綴ってみようと思う。

これからも商社は生き残るだろう。とはいえ、実質的な成長はあまり期待できないだろうし、商社マンの転職市場価値は低いまま、あるいはさらに下がっていくと思う。その一方で、給与や待遇が著しく悪化することもないので、いろいろと我慢を重ねながら、安定的に1,000-2,000万円を貰えるならそれはそれで全然アリだったりする。

とりあえず今回は初回なので、そういった意見の前提となる「商社の機能」「稼ぎ方」「収益維持の方法」といった一般的な話をしていく。

 

(総合商社の文化的な部分については、下記の記事を参照。商社の特徴をふんだんに盛り込んでいる。)

>> 日系大企業で働くべき人, 働くべきではない人

 

 

商社とは?総合商社とは?

基本的には、メーカーから何か商材を買って、メーカーや卸売に対して売る。

 

f:id:rin_nekki:20161102213029p:plain

 

f:id:rin_nekki:20161102213158p:plain

買先や売先に欠けている機能を補って、その分の仲介手数料(口銭, Commission)をもらうイメージだ。

f:id:rin_nekki:20161102214004p:plain

それぞれの機能については下記するが、それをあらゆる商材・地域・機能をもって行うのが、いわゆる総合商社である。

 

 

商社の機能は、マーケティング/物流/外為/金融機能…etc

貿易というのは実際にやってみると事務手続きがかなり面倒くさいので、「慣れている人に丸投げする」という側面が大きい。

国をまたぐと、会計/税務/財務/物流を始めとして、事務処理が膨大に増える。

あとは、お金を持っている割に、維持すべき設備などもないので、事業への投資や融資をする金づる的に扱われる。

 

 

1.マーケティング機能

f:id:rin_nekki:20161102215111p:plain

先ほども例をあげたが、メーカーが「商品を売りたいけど、どこに売ればいいかわからない」「良いものを輸入したいがちょうどいいものがない」という状態のときに、売先・買先を見つけて何とかしてくれるのが商社だ。

過去に無数の取引がデータ管理されていること、そして何より重要なのは世界中に現地法人を持っていることが、それを可能にしている。

三菱商事は海外に195拠点を持っており、当然ながらそれぞれ現地の人間が日々商売を広げていっている。この販路や情報網が一つの機能となる。

 

2.物流/外国為替

貿易というものは非常に面倒くさい。輸出入が規制されている商品もあるし、適切な価格で関税を納めなければならないし、税制も国によって異なる。外貨規制があったり、通関の申告価格を事後修正できなかったりもする。

こうした面倒なことを自社でやったり、あるいは各種の専門家やコンサルにフィーを払ってお願いしたりすると、時間も金もかかってくる。

とりあえず商社に頼む、というのが日本企業の過去の通例である。

 

なぜ商社が安く引き受けてくれるのかというと、大口で手配できるからだ。陸運や海運、損害保険、為替予約などを大量に使っているため、お得意様レートでの取引になる。

小さな鶏肉農場がいちいち全てやっていたら、時間がかかって仕方ないし、小口での依頼だと物流も外為も高くつく。

また、商社のグループ会社には、物流や外為専門の会社があって専門性も高い。

 

3.金融機能

支払を猶予してくれたり、銀行の連帯保証人になってくれたり、新しい商売への出資を一緒にやってくれたりと、金づる的要素もある。

例えば、鶏肉を小さな農場から買って、海外の食品メーカーに売るとする。

農場への支払は60日後、海外メーカーからの現金回収は120日後という決済条件で取引をすると、農場は海外メーカーと直接商売をするよりも早期に資金回収ができるので嬉しく、海外メーカーとしては支払を延ばせるので嬉しい。

差分60日は商社で資金負担をし、実質金を貸しているのと同義となる。など。

 

4.与信管理機能

客から金を回収できないリスクというのは常に存在する。

商売によっては、商品を渡す前にお金を回収できることもあるが、基本的に掛け商売が多い。商品を納入した月の月末から起算して、何か月後にお金を貰う、というようなツケの商売だ。

国内でも「売先が倒産して資金回収できない!」というような事態はたまに起きるが、海外の場合は政情が不安定だったり、外貨規制があったりと、リスクが更に高かったりする。

なので、メーカーとしては直接よくわからない国のよくわからない客にモノを売るよりかは、絶対にお金を支払ってくれる日本の商社にモノを売った方が確実に資金を回収できる。

商社はなぜそんなリスクを引き受けられるかというと、こういった与信リスクを管理する専門部隊を内部に設けていて、与信リスクを低減している。

 

 

 

事業投資で「バリューチェーン」を作り、効率良く商売をする

商材によっては粗利率が1%少々、と相当薄い利益率の商売もある。(粗利=売上総利益=売上高―売上原価)

大口で商売をして、物流コストや銀行にかかるコストを低減していることは上記したが、もっと良い資金効率で、消費者まで商材を届けるための仕組みが「バリューチェーン」である。

鶏肉を例とすると、上記までの話では、結局のところ鶏肉を買って売ってするだけであり、ほかの製造ラインなどにはかかわらない。小さな商社ではこういった貿易業だけで終わるだろう。

 

f:id:rin_nekki:20161102224237p:plain

 

しかし、総合商社は、飼料メーカー・加工メーカー・コンビニを子会社として持っている場合がある。

 

f:id:rin_nekki:20161102224302p:plain

 

それによって、グループ全体で同システムを使用してデータを一元化したり、戦略もある程度一貫性を持って商売を進めたり、それぞれの工程でかかる無駄を削減することができる。

 

f:id:rin_nekki:20161102230308p:plain

 

それぞれの工程で市場へ販売していくし、商社本体からの貿易も安定する。この流れを作ることで、原価を削減し、収益を上げているのだ。

 

 

事業のポートフォリオを組んで、会社を安定成長させる

f:id:rin_nekki:20161102201804p:plain

 

商社不要論だとかなんだとか度々言われてきたが、結局商社は生き残っている。「扱う商材の幅広さ」「カバーする地域の多さ」のおかげである。

繊維が好調であればそこに投資するし、中国が好調であればそこに投資する。資源ブームによって一気に稼いだことも記憶に新しいだろう。

儲かる商材、儲かる地域に投資を回して、儲からなくなったものに関しては維持・フェードアウトすればいい。そのバランスを取り、また、商材によって自社の機能を適合して、生き残ってきた。

また、上で解説したようなトレーディング事業に当てはまらない不動産業や、電力事業、水事業なども、この投資のバランスを加味したものだ。現在、東南アジア・北米の電力事業など、非常に好調の商社が多いだろう。商材、地域への投資のバランスだけが総合商社の生き残りを左右する。

 

 

計画作成・稟議書・管理部門の膨張は必至

「資金力」「幅広い地域での商売」「幅広い商材」を用いて、今後儲かっていく商売にバランス良く投資することが、総合商社独特のビジネスモデルである。

そのバランスを取るために、膨大な数の営業部/関係会社から情報を取ってくるのは容易ではない。

そのため、社内の稟議書や年間計画・5年計画・10年計画などの予算申請、計画見通しなどが異様に多くなってしまう。

稟議書・計画策定の多さやコーポレートの巨大化は、商社のビジネスモデルからは必至であり、効率化すべきではあるだろうが、これがなければ商社たりえない。

それらの業務によって、個々人のスキルや市場価値が上がるわけではないのだが、「組織のための個人」という世界であり、それによって比較的高い給与が貰えているのだ。

 

 

まとめ:「面倒な事務作業の代行」と「顧客リスト」が機能

というわけで、商社で身につく専門スキルなどは存在しない。便利な何でも屋として、お金を貰っている。

商材や地域を取捨選択し、ノウハウが蓄積する体制・組織に一定の価値はあるだろうが、個人の専門スキルとしてはなかなか身につかないだろう。

個人の能力として身につくものを強いてあげるのであれば、「適応能力」。

 

そのあたりについては、商社を出て転職・起業をする人たちのパネルディスカッションで大いに語られていたので、こちらの記事もぜひ参照いただきたい。

>> 【商社からの転職/起業】「元商社マン×スタートアップnight」に行ってきた

 

 

参考書籍

ベタだが図がわかりやすい。

就活生は、業界研究の本をたくさん読んでいる暇があったら、一冊を何度か読んで、仮説・疑問を社員にぶつけるべき。

 


伝手がなければ下記サービスから伝手を作ろう。

 

>> OBOG訪問ができる就活サービス「ビズリーチ・キャンパス

>> 肉や寿司を食べながら採用担当と話ができる就活サービス「ニクリーチ


 

関連記事

商社の文化についてはまとめた記事。

>> 日系大企業で働くべき人, 働くべきではない人

 

そんな商社を出て転職・起業をする人たちのパネルディスカッションをまとめた記事。

>> 【商社からの転職/起業】「元商社マン×スタートアップnight」に行ってきた

 

商社からベンチャーに転職して活躍されている方と、転職活動中の商社マンの対談記事。

>> ベンチャー商社に転職されたISHICOさんに、総合商社からの転職について相談してみた

 


follow us in feedly