なぜ総合商社は万年割安銘柄なのか? ~持分法経営の意義~



採用説明会や、新卒のエントリー数などでいったら、かなりの人気であろう総合商社業界だが、実は株式は割安として万年放置されている。

 

割安かどうかというのは、主に、PER(=時価総額/純利益)と、PBR(=時価総額/純資産)という二つの指標から見られることが多い。(※ 時価総額=株価×発行株数)

 

PER(=時価総額/純利益)が低ければ、稼ぎの割に株価が低いことになる。

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16.3期は資源等の一過性の減損が入っている商社が多いので、今期の目標純利益を使うことにすると、日経平均銘柄の平均値よりやはり低い。

 

また、PBR(=時価総額/純資産)が低い場合も割安とみなされる。株式発行時の調達資金と今まで稼いだ蓄えと見比べて、時価総額が低いためだ。

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やはり日経平均の銘柄の平均値と比べて軒並み低い。

 

前回の記事「商社とは?ビジネスモデルは?」で、書いた通り、今後も安定性があるように思える総合商社。

株価を上げることには当然メリットがあるので(過去エントリー「株価を上げるメリットとは?」参照)、商社がIRをないがしろにしているわけではない。

商社について定期的に書いていく流れになってきたので、ここで書き記しておこう。

 

理由1.会社がわかりにくい。(収益ドライバーの特定が困難)

あらゆる地域、商材に収入源を分散するのが、商社の生存戦略であるが、それゆえに一つの指標から利益予想をするのは困難である。

円安になって得する部署もあれば損する部署もある。原油価格、銅価格、中国経済成長率、自動車販売台数、一つの指標を見て会社の損益を予想することは難しく、追うべき関連会社もたくさんある。

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事業内容もわからず投資するというのはリスク以外の何物でもない。とはいえ、わかりにくい会社のリサーチに時間を割くようなら、もっとわかりやすい銘柄に投資すればいいだろう。

近年日本株を最も多く取引しているには外国人投資家であり、基本的に日本にしか存在しない「総合商社」という業態への理解が浅いことも起因するかもしれない。

理由2.純利益のうち「持分法投資損益」の占める割合が大きい

原則として20~50%出資した出資先を「持分法適用会社」とし、その会社で上がった損益は、親会社の経常利益に加えられる。

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しかし、持分法投資損益は、P/L科目の中でも現金への換金性は非常に薄い

株主は配当についても当然注目するので、企業には「利益」と「現金」のどちらも稼いでもらって、配当原資を蓄えてもらわないと困るのだ。換金性の低い持分法投資損益ばかり増えていっても、株主にとってメリットはやや薄いと言わざるをえない。

もっと詳しく解説しよう。

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今年度の決算は、80億円で買った商品を100億円で売り、人件費や賃貸費などに10億円かかって、実行税率が40%とすると、純利益は6億円になる。商品代の支払/入金のタイミングや法人税を納めるタイミングにある程度ズレが生じうるものの、商品代や人件費には実態があり、だいたい純利益が手元に残る現金と等しくなる。

しかし、「持分法投資損益」とは、自社とは切り離された他の会社であがった利益であり、別に出資した持分の利益分の現金を親会社がもらえるわけではない。持分法適用会社で1,000億円あがろうと、1億円しか配当をしていなければ、現金面での親会社へのインパクトは「1億円 × 持分比率」のみになる。

つまり、持分法投資損益でたくさん利益を稼いでも、親会社の手元に残る現金は意外と大したことなかったりするのである。

業態にもよるが基本的には「親会社単体の純利益」と「親会社の手元に残る現金」の金額に大きな差は生じないのだが、連結決算上の「持分法投資損益」と「親会社の手元に残る現金」には大きな乖離が生じうる。手に入る現金である「配当金」は「持分法投資損益」の30%程度であったりする(海外はもっと高いが、東証銘柄のだいたいの平均値はその程度)。

 

伊藤忠の17.3期の半期(1~2Q)において、純利益は2,022億円で、うち持分法投資損益が960億円もある。一方で、実際に受け取った配当金は379億円しかない。持分法適用会社以外の一般投資先を含んでも、379億円だけだ。

前年比で持分法投資損益は242億円増加しているが、受取配当金は10億円減少しており、むしろキャッシュインは減っているのだ。

グラウカスに目をつけられるのもなんとなくわかる(グラウカス vs 伊藤忠 参照)

 

・・・とはいえ、配当利回りは結構良い。

「1.利益予想が困難でよくわからず需要小」「2.持分法の影響から利益が笠増しされ割安に見える」ということで、PER・PBRで判断すると割安に見えるが、万年割安株なのには理由があるということだ。

売上高で会社を判断できないし、純利益だけでも会社は判断できない。まあそのあたりは別のエントリーを書いていこう。

 

ただ、配当に関していえば、日本の企業の中では利回りは良い方だ。

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リスク分散をしっかりしている投資信託的な感じで商社に投資したらいいよ、という記事をよく見かけたが、そうかもしれない。一方で、事業内容や商品市場動向を見て株式投資をしたい方には不要な銘柄なのだろう。

とりあえず商社勤務の方は持株会とか結構良いんじゃないでしょうか。会社から補助出るし。


 

会計について要点を勉強したい人はこちら

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わかりにくいビジネスモデルをとっている総合商社についての解説記事

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そんな商社を出て転職・起業をする人たちのパネルディスカッションをまとめた記事。

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